VirtualBoxでWindows 98SEを仮想化する:2

第2回 Windows 98SE のインストール(構築編)

Written by Yuki_A : 2011/06/06 12:00:00
Update : 2015/04/20

0.前回までの結果

 前回はゲストOSに相応しい仮想マシンの構築でしたが、いよいよメインの作業、OSのインストールです。
MS-DOS の知識が必要ですので、分からない人は「そういうもの…」として書かれた通りに操作すれば悩まなくて済みます。
また「MS-DOS など当たり前だ!」とする方は、前半を斜め読みしてください。 これは MS-DOS に不慣れな方向けの記述ですから。

起動画面1
 まず仮想マシンを起動してみます。
OSが入っていませんので、当然こんな画面になります。

起動画面2
 ロゴ画面で F2 を押すと左の画面になります。
実機なら DEL キーなどで BIOS 設定画面になるのですが、
VirtualBox では起動メニューになります。

1.インストールCDのマウント

 仮想マシンが前回の状態であれば、仮想マシンをリセットすると CD から起動します。

起動デバイスの選択
 左のような画面になり、2通りのメニューが示されます。

 この時、最初は選択を迫るためカウントダウンが行われ、放置すれば
HDD からの起動を自動実行します。
とりあえず、カーソルキーで選択を変更すればタイマーは停止し、
じっくり選択可能です。 なお決定は Enter キーです。

実行する作業の選択
 CDからの起動を選択実行すると、今度は以下のような画面になります。

この画面もカウントダウンタイマーが働き、放置すると Windows 98 の
セットアップが開始されてしまいます。
選択肢を変更するとカウントダウンは停止します。

 なぜこんな画面をわざわざ…と思うかもしれません。 それは過去のOSだからです。
今時のメーカー製PCを購入して利用しているユーザーにとって、OSのインストールは珍しい事かもしれません。
特に力を入れる必要も無いかと思ったのですが、そういうユーザーへの配慮という事で掲載しておきます。
ご存知の方々には単なる情報の水増しと思って頂ければよろしいかと…
なお、最初の画面はインストーラの都合上現れる画面で 必ず 2.Boot from CD-ROM を選択します。

 そのまま 1. Start Windows 98 Setup from CD-ROM を選べばOSはデフォルトの設定でインストールされます。
ですが起動後に ACPI の設定で泣くことになります。
仮想マシンでは ACPI機能を与えられているのに、デフォルトのセットアップでは設定されないからです。
これを有効化させるには自動インストールではなく MS-DOS から手動インストールを行う必要が有るのです。
方法は簡単で、 Setup.exe にパラメータを付けて起動するだけです。

 私の環境では既に Windows 98SE のディスクはイメージファイル化(iso 形式)してあります。
以下のようにディスクイメージファイルをそのまま CD-ROM としてマウントすれば CDを使わずにインストール可能です。
この方法は Windows だけでなく、CDブート可能なOS全てで有効です。
イメージファイルのマウント
 左の画像はマウスで指定したメニューからマウントする瞬間です。
一度マウントした仮想ディスクファイルは登録されマウントメニューに表示されます。
ちなみに WindowsUtility.iso は私が前回紹介したツールやドライバが入った CD
イメージです。

インストールするOSのディスク、またはイメージがマウントされたら仮想マシンを
リセットします。

仮想マシンはディスク起動に設定されていますので、CDからの起動を選択し、
次に以下の場面のように 2. Start Computer with CD-RO support を選択します。


2.インストールの準備

・MS-DOS の起動

CD付きMS-DOSの起動
 必ず 2.Start Computer with CD-ROM support. を選択します。
DC-ROM が読める状態で MS-DOS を起動するわけです。

MS-DOSの起動画面
 途中でキーボードの種類を問われます。
キーボード種類に合わせて適切なキーを押し指定します。
それが終わるとプロンプト状態で待機状態になります。

この時、論理ドライブ(a: などドライブ文字)の構成を覚えておきます。
画面の例では CDドライブが D: に割り当てられた事などです。

通常 A:\ と言えばフロッピードライブを指します。 そして C:\ はハードディスクです。
これを一覧にすると…
  • A:\ フロッピー (実は RAM-DISK に割り当てられている)
  • B:\ フロッピー (無し)
  • C:\ ハードディスク
  • D:\ CDドライブ
こういう事になる訳です。


・領域確保

 新品のハードディスクです。 まず領域確保が必要です。 フォーマットは領域確保してからです。
これをパーティションを作成するとも言います。
Windows 98SE は ACPI の都合上、この状態からセットアップする事になります。
困った事に fdisk.exe のあるディレクトリには format.com が存在しません。
コマンドプロンプトを駆使して作業を続行する事になります。

fdisk で領域確保(パーティション)
A:\> のコマンドプロンプトに fdisk と記入し、Enter キーを押します。

大容量HDDを使用可能に
 こんな画面になります。
そしてあらかじめ[Y]が選択されていますので、そのまま Enter キーを
押します。

領域作成
 領域の新規作成です。
デフォルトの[1]のまま Enter キーを押します。

既存のHDDを再構成するのであれば、他の選択肢です。

領域確保
 次の工程です。
これもデフォルトの[1]をそのままに Enter キーを押します。
なお「拡張 MS-DOS 領域」とは基本領域以外に作成される領域で、
これがHDDの論理分割です。

操作中のHDDは仮想マシンのHDDです。
1ドライブに対し複数パーティションは管理上無意味です。
データ専用のHDDを追加した方が管理効率が良くなります。

確保開始
 領域の確保作業が始まり…

アクティブ化
 こんな画面になります。
これも [Y] で領域をアクティブ化します。
この時にブートレコードが作成されます。
そして最後の画面になります。

確保終了
 これで fdisk.exe による領域確保は終了です。

 fdisk を行っただけでは領域が確保されただけで、まだまだ MS-DOS や Windows からは認識されません。
続いて format する必要があります。 この画面で [ESC]キーを押しても プロンプトに戻るだけで何も起こりません。
ここまで終われば迷わず仮想マシンをリセットします。


・仮想HDDのフォーマット

 再起動したら前回と同じく CDドライブが使える状態に MS-DOS を立ち上げます。
仮想ハードウェアから見れば、既にHDDは認識されていますが、論理ドライブとしては format しないと
OS側からは認識されません。 当然、この段階で format します。
また、そのままセットアップに突入しますので落ち着いて操作してください。

!!!注意!!!

 ここで大きな問題が発生します。 ホストのキーボードが USB 接続だった場合です。
MS-DOS 起動時に、日本語106キーボードとして設定を行ったにも関わらず、ゲストOSでは PS/2 英語101キーボードとして認識されてしまいます。 この原因は二つあって…
  • 起動時のキーボード設定はPS/2に対するもので、OSそのものに USBキーボードに対する設定が無かった
  • 日本語 USB キーボードであっても中身は英語キーボードと同じであった
…というものです。

OS側では存在しない PS/2キーボードが日本語仕様として認識され、USB側をデフォルトの英語キーボードと判断した結果です。
Windows 95 後継OSであっても、開発当時には USBキーボードが存在しなかった結果起る問題です。

 この現象はゲストOSの仕様の問題で仮想マシンのバグではありません。
タイピングに利用する記号は3種類程度ですから、コマンドを実行する前に どの文字がどのキーに割り当てられているのかをメモ書き
しておく事をお奨めします。
なお、この問題は Windows のインストール完了後には解消されています。 また手動で修正するOSもあります。
  • ] ⇒ \(エンマーク)
  • Shift + ; ⇒ :(コロン)
  • Shift + 8 ⇒ * (アスタリスク)

 残念ながらカレントドライブ A:\ には format.com が存在しません。
そのためカレントドライブ/パスを移動しなければなりません。
MS-DOS の知識とは言ってもこの程度ですが、95系 Windows 以前を扱うには必須の知識となります。

赤字はプロンプト、青字は入力すべき文字、そして【↓】は Enter キーを押すことを表します。
以下のようにカレントパスを移動し、format コマンドを使います。

仮想HDDのフォーマット
A:\>   (初期状態)
A:\>d:↓   (カレントドライブを D:\ に変更)
D:\>cd \win98↓ (カレントディレクトリを D:\WIN98 に変更)
D:\WIN98>format c:↓ (C:\(HDD)をフォーマット)


フォーマット終了
 左はフォーマット終了時の画面です。
ボリューム(名)は特に必要ありません。 後で変更可能です。

 フォーマットが終了すればHDDがOSから認識可能になります。
そしていよいよ Windows 98SE のセットアップになります。
画面はそのままで、さらに次へ続きます。

3.Windows 98SE のセットアップ

 まずセットアップ対象のHDD(C:)をカレントドライブとします。
D:\ のカレントディレクトリはそのままなので D:\WIN98 配下にある Setup.exe が D: として起動可能です。

セットアップ開始
D:\WIN98>c:↓   (カレントドライブの変更)
C:\>d:setup /pj↓  ( pj というパラメータを与えてセットアップ開始)

/pj というパラメータが ACPI 機能を有効化するスイッチです。
これを指定するために、わざわざ手動セットアップを行った訳です。
通常のセットアップだと、このスイッチは指定されず、機能は有効化
されません。

 途中、スキャンディスク(HDDの検査)が入りますが実行不可能な場合も
あります。 その場合は中断せず、スキャンディスクの結果を無視して
セットアップを続けます。 ([ESC]キーで継続)
この後はセットアップの指示に従って操作すれば Windows 98SE がインストールされます。

余談

 VirtulaBox の仮想マシンでは設定したモリーそのものが MS-DOS のコンベンショナルメモリーとして与えられます。
実機では BIOS が MS-DOS に 640 kByte の範囲をコンベンショナルメモリーとして与え、残りが改めて拡張メモリーとして MS-DOS に割り当てられます。 全部がコンベンショナルメモリーとして与えらるため MS-DOS では 640 kByte 以上のメモリー管理範囲外は
扱えず、拡張メモリーでもないため Setup.exe と Scandisk.exe が同居できず、メモリーが有るにも関わらず Scandisk.exe がメモリー
不足になって動作しません。 それに MS-DOS ではコンベンショナルメモリーの一部を殺し、覗き窓として拡張メモリーの置き換えで
大きなメモリーを扱っています。 また 95系 Windows は その起動を 16bit 環境の MS-DOS に依存しているため、起動時に同じ理由でメモリー不足に陥り Windows が起動できないのです。
このような理由のため、MS-DOS に対して「拡張メモリーは無い」と指定しなければならない訳です。

 なぜそうなのか?
それは VirtualBox 自体が最初から 32bit 以上のゲストOSを対象とする仕様のため、16bit が関わる95系は仕様の対象外
だからでしょう。 それでも 95系 Windows が実行可能なのは Windows のカーネルが 32bit 動作だからです。
つまり Windows が立ち上がってしまえば、Windows の機能として16bit 環境がエミュレート可能になるからです。
実際、Windows の MS-DOSモード(通称 DOS窓)は仮想16bitモードですから。

 16bit 環境が使用できないのは VirtualBox の仕様であって、サポートされないゲストOSを扱うからには当然の結果なのです。
実際には 16bit 環境も DOS マシンとして設定可能ではありますが「それが使えるから…」と、その環境に Windows をインストール
する事自体が無意味です。
VirtualBox は非対応とはいえ、それぞれのOS向けにカスタマイズされた環境を提供する機能も有ります。
それが何のためかを考えると、相応しくない環境が相応しいとなって 95系 Windows では矛盾です。
仮想マシンとして、インストールするゲストOSに最も適した仮想ハードウェアが与えられるとすれば、非対応は止むを得ない部分
ではありますが、甘んじてそれを利用し活用する方向がベストではないかと思えます。

セーフモード
 セットアップの最終工程で再起動すると黒い画面でフリーズします。
これは仮想マシンがフリーズ状態なのであってホストマシンとは何の関係も
ありません。
ファイルのインストールは既に終わっていますので、ここまで来たら、
Windows はセーフモードで起動可能になっています。

 という事で、F8 キーを押しつつ仮想マシンをリセットです。
リセットする前に仮想マシンの電源を切り、次からはHDDから起動するように
設定を変更しておくのも良いでしょう。
もうCDから起動する必要は無いのですから。

 なぜセーフモード?
セーフモードでは余計なデバイスを組み込みません。
幸いにしてセーフモードなら拡張メモリーの設定を無視出来るからです。
また、このセーフモードで MS-DOS の設定ファイルである config.sys を書き換えます。

セーフモード・起動成功
セーフモードなら起動は可能です。 ですが狭い画面です。

フォルダオプションの変更
 まず、狭い画面を少しでも有効に使うため、IMEバーはタスクバーに
入れておきましょう。

エクスプローラを開き [表示] ⇒ [フォルダ オプション]
そして[表示]タブより 以下を設定しておきます。
なぜなら config.sys はシステムファイルであり、標準の状態では
見えなくされているからです。
  1. 登録されているファイルの拡張子は表示しない ⇒ チェック解除
  2. すべてのファイルを表示する ⇒ 選択

 この状態で起動ドライブ(C:\)を表示させると以下のようになっています。
ここから config.sys を NOTEPAD.exe (メモ帳)で開きます。

表示例   Config.sysの編集

編集は以下のとおりです。
device=C:\WINDOWS\EMM386.EXE RAM の RAMNOEMS に書き換え、そのまま上書き保存します。

そして通常の再起動…

初起動
 これでインストールは完了です。
あとは使い勝手を良くするためのチューニングです。
画面モードやサウンドを中心に使えるようにします。


 今回はインストール完了までを特集しました。 ですが、このままではまだまだ使いにくいのが現状です。
それでも仮想マシンは動作しています。 残念なのは GuestAdditions がインストール出来ない事です。
仮に GuestAdditions がインストール可能だったら、もっと使い勝手は良くなる筈です。
やはりサポート外のOSでは限度が有るという事でしょう。
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